ビクターロック祭り2016

LIVE REPORT

観客のまぶしい笑顔でいっぱいの会場内。早くもウキウキしたムードが漂うBARK STAGEに最初に立ったのは、THE BAWDIESだった。大音量のSEが流れる中、登場したROY(Vo・B)、TAXMAN(G・Vo)、JIM(G・Cho)、MARCY(Dr・Cho)を、力強い歓声が包む。そして、スタートした1曲目「IT’S TOO LATE」。躍動する熱いビートに誘われ、フロア全体にダンスの輪が一気に広がる。2曲目は「SING YOUR SONG」。グルーヴィー極まりない演奏、パンチの利いた歌声がますます心地よい。「身体は起きとりますか? 一緒に歌ってもらっていいですか?」とROYが呼びかけると、巻き起こった特大のシンガロング。誰も彼もがTHE BAWDIESのロックンロールの虜となっていた。

「お代官様こちらをお納めください」「おぬしもワルやのう」……TAXMANとJIMによる寸劇を挟んで3曲目「JUST BE COOL」。清々しいサウンドが会場全体を潤していく。そして迎えたインターバル。「騒がしい1日が始まっておりますよ。今年は新たな作品を作れたらなあと思いつつ、7月には野外ライヴがあります。野外でワンマンは初めて。よかったらご参加ください。ロック=ビクターと呼んで頂いてもいいでしょう。ビクターの犬と言えばニッパーくんかTHE BAWDIESです」。ROYのMCを経て、昨年10月にリリースされた最新シングルのタイトル曲「SUNSHINE」が披露された。穏やかに響き渡るサウンドが心地よい。観客の明るい歌声も加わり、とびっきりの一体感が生まれていた。


続いて、「YEAH」「LEAVE YOUR TROUBLES」「YOU GOTTA DANCE」が駆け抜けるメドレー。「俺の合図で飛べますか?」という言葉と共にスタートしたのだが、飛び跳ねながら踊る観客の熱気がものすごい。その勢いのまま「NO WAY」へと雪崩れ込み、会場内の気温も観客のダンス衝動もさらに急上昇した。そして、「まだまだ腹ペコなやつ、かかってこい!」と観客を煽り、ラストを飾ったのは「HOT DOG」。演奏が終了すると、THE BAWDIESのライヴの恒例行事『ワッショイ!』が行われた。「準備はいいか? いくぞ! せーの」……TAXMANの合図で「ワッショイ!」と観客が一斉に叫んで迎えたエンディング。「野音で会いましょう。では、僕たちは普通の男の子たちに戻ります!」という言葉を残して、メンバーたちはステージから去っていった。





Text by 田中大
Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

一昨年の「ビクターロック祭り」に出演、自分たちの担当者が安月給だという話をして「安月給!」コールを巻き起こし、幕張メッセを爆笑と興奮で埋めたサンボマスター。山口隆、今年は出てくるなり「僕は2年前、ビクターの山上という人が給料が安いと言ってしまい、それが社長のコンプライアンス的にまずかったみたいで、去年出られなかったのはそのせいかと」。フロアが爆笑に包まれる中、「みなさんも安月給、僕らも安月給、ビクターも安月給、でも行きたいところがあるわけなのよ近藤くん!」 と、「私をライブに連れてって」でスタート、続いて2曲目は「安月給ミラクルを起こせんのか?」と「ミラクルをキミとおこしたいんです」へ突入。それでなくても 暴風雨のようなバンド・サウンド、今日はひときわ腹に響くし肌にビリビリくる。山口、「俺たち今日は安月給ってことで集まってるわけよ! 生まれていちばん幸せになれ!」と「愛してる愛して欲しい」でさらにフロアの温度を上げる。「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」では絶叫のようなシンガロングを起こし、「できっこないを やらなくちゃ」では今日何度目かのジャンプの海を出現させ、最後は「一緒に生きてくれよ!」と呼びかけながら「可能性」で感動的にシメ。いついかなるところでも熱狂を巻き起こさなかったことなど一度たりともないサンボの真骨頂みたいなステージだった。なお「安月給!」は、「できっこないを~」あたりまで連呼され続けた。


Text by 兵庫慎司
Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

カラフルな衣装に身を包んだメンバーたちが現れ、一気にカラフルな空間と化したROAR STAGE。そして、「More Power」がスタートするや否や、Gacharic Spinのオリジナリティが、凄まじい勢いで迫ってきてビックリ! パワフルにドラムを連打、安定感たっぷりにパンチの利いた歌声を響かせるはな(Vo・Dr)。妖艶に歌いながらキーボードをプレイするだけでなく、ステージの前方にまで飛び出して踊る瞬間もあるオレオレオナ(Vo・Key)。終始浮かべる明るい笑顔とアグレッシヴなギタープレイのコントラストが、とにかくカッコいいTOMO-ZO(G)。身体を激しく揺らしながら重低音の嵐を放射し続けるF チョッパーKOGA(B)。ステージ前方の中央エリアを定位置にして、パワフルに踊りまくるまい(Performer1号)&ねんね(Performer3号)……各々の演奏、パフォーマンスが眩しくスパークする様に刺激され、集まった観客は夢中になってクラップしていた。

「このステージに立てること、本当に嬉しく思います。最後まで楽しんでいきましょう!」(F チョッパーKOGA)。「少しでも残るものがあったら、ワンマンライヴに来てください。最高にセクシーな昼にするぞ!」(オレオレオナ)。2人のMCを挟んで突入した2曲目以降も最高だった。熱い拳が掲げられ、巻き起こった雄々しい大合唱。大きな旗を使ったパフォーマンスも目を引いた「夢喰いザメ」。F チョッパーKOGAによる強烈なスラッピングプレイからスタート。オレオレオナのキーボードが突然垂直にせり上がり、鍵盤面を観客に見せながらプレイを繰り広げる場面にも度肝を抜かれた「赤裸ライアー」。そして、ラストに届けられたのは「ダンガンビート」。タオルを振りまわしながら踊る観客も、ステージ上のメンバーたちも汗を滲ませながらとびっきりの笑顔を浮かべていた。TOMO-ZOの華麗なギターソロが炸裂する場面も盛り込みつつ、エンディングを迎えた時、会場一杯に漂っていたのは、真っ白な灰も残らなそうな完全燃焼のムード。初めてGacharic Spinの音楽に触れた人もいたと思うが、すっかり彼女たちの魅力の虜になってしまったはずだ。

Text by 田中大
Photo by Yosuke Kamiyama(SOUND SHOOTER)

BARK STAGE 3番目のアクトはTHE BACK HORN。真っ青な照明に包まれて登場した4人は、統一感のある真っ黒な衣装を身に纏っている。山田将司(Vo)が一発雄叫びをかまし、軽く挨拶したあとの1曲目は「その先へ」だ。熱い歌声とともに分厚い重低音が轟くとそれに鼓舞されてだろうか、フロアからは力強く拳が上がっていく。続く「刃」、アウトロでは「♪オーオーオー」とひとつの大きな生き物が吠えるみたいに会場が一体となり歌声を上げる。それは逞しくも美しく、言うならば生命の讃歌だった。そしてライヴで披露される度に歓喜の声を巻き起こす名バラード「美しい名前」が届けられたあとにはMCへ。松田晋二(Dr)はメジャーデビューからの15年をともにしてきたビクターのことを「一人しか彼女を知らないまま結婚したようなもの」と喩えつつ感謝の意を伝え、オーディエンスに対しては「生と死とか、希望と絶望とか、俺らは一貫して『生きる』という奇跡みたいな大切さを歌ってきたと思います。これからも悲しみに打ち勝つための曲を作っていきます」とまっすぐに語っていた。

「真夜中のライオン」では岡峰光舟(Ba)のスラップが歓声を巻き起こし、菅波栄純(Gu)がサイレンのようなその音を鳴り渡らせていく。ラストの「コバルトブルー」まで、演奏の熱量がそのまま真っ赤な血に変わっていくかのような、そしてそれをオーディエンスの一人ひとりの体内にドクドクと流し込むような、渾身のステージを今日も見せてくれた。


Text by 蜂須賀ちなみ
Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

Awesome City Club、エリアの外にもどんどん人が集まってくる大盛況の中、PORIN(Vo/Syn)とモリシー(G/Syn)のふたりがシンセに向かう「Lesson」でスタート。atagi(Vo/g)の甘い声が、じわじわと場の空気を染めいく。すっかり染めきったところで四つ打ちのキックとギターが響き、PORINがボーカルをとる「4月のマーチ」へ。フロアの揺れ、目に見えて大きくなる。 曲終わりでatagi、「バレンタインデーに何してんだよ、って感じですよね」などと口にし、「はみ出し者のきみたちに贈ります」と「アウトサイダー」をプレイ。サビでPORINが左右に腕を振ると、それに合わせてフロアいっぱいの腕が右に左に揺れる。最後の曲「涙の上海ナイト」では、「よかったらみんなで歌おう!」というatagiの呼びかけに応え、「♪東南西北」のシンガロングがくり返される。それが終わった時「はっ! 今、頭ん中が別の世界に行ってた!」と我に返る、みたいな感覚に陥った。


Text by 兵庫慎司
Photo by Yosuke Kamiyama(SOUND SHOOTER)

早くも折り返し点に差し掛かった「ビクターロック祭り2016」のBARK STAGEには、今回のラインナップの中で唯一「ビクターロック祭り」3年連続出演となるDragon Ashが登場。ATSUSHI(Dance)&DRI-V(Dance)が満場のクラップを煽ったところで、開幕早々「For divers area」炸裂! 情熱的なビートとアグレッシブなアンサンブルで歓喜に沸き返るフロアを、「誰がチョコもらえるとか、誰がチョコもらえねえとか、関係ねえ!我々はラウドバンドです!」というKj(Vo・G)のシャウトがさらにでっかく揺らしていく。

「屋根ぶち破るぐらい飛び跳ねろ!」というコールとともに叩き付けた「AMBITIOUS」の、身体と心を爆風のように吹き抜ける高揚感! 沸き上がる観客の歌声に、満足げに親指を立てるKj。最高の瞬間だ。鉄壁のサポートベーシスト=KenKenをフィーチャーした「The Live」では、KenKenの激烈スラップと桜井誠(Dr)のタフなリズム、HIROKI(G)の鋭利なギターサウンドがせめぎ合い高ぶりながら、会場をむせ返るような熱気で包んでみせる。「電車止まったりしてんのに、こんなに集まってくれてどうもありがとう!」とKj。「こんな悪天候の中ロックフェスに来るっていうのは、みんなにとってロックフェスとかライブハウスが、かけがえのないものだって実感できる瞬間でもあるし、共感できる部分でもあるんで。お互い楽しんで帰りましょう!」という言葉に、熱い拍手が広がる。

最新アルバム『THE FACES』から披露した「Neverland」で、静寂から熱狂へと駆け上がるドラマチックなロックの風景を描き出した後、BOTS(DJ)のスクラッチとともに流れ込んだのは「百合の咲く場所で」! ばりばりと空気を震わせるKjの絶唱と魂のロックサウンドに応えて、BARK STAGE狭しとオーディエンスの手と歌声が突き上がる。熱いステージの最後を飾ったのは「Fantasista」! 観客丸ごとロックの彼方へと導いていくような、強さと激しさに満ちたアクトだった。


Text by 高橋智樹
Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

続いてROAR STAGEに登場したのは、20歳のシンガーソングライター・藤原さくら。昨年3月にメジャーデビューを果たし、今年1月にはBillboard Live TOKYOにて単独ライヴを行った彼女。「初めましての方も多いかと思いますが、よろしくお願いします」と丁寧に挨拶したあとアコースティックギターを爪弾きながら、ギター/ベース/ドラム/キーボードという編成のサポートバンドともにカラフルなアンサンブルを軽やかに紡いでいく。1曲目は「Oh Boy!」。絶妙な柔らかさを持つスモーキーヴォイスと、高音を張ったときの透明感のある歌声を対比させながら、少女の恋心を描いていく。一転「ラタムニカ」では、色気と気怠さを交互に覗かせるようなその表現力に魅せられた。曲ごとに、瞬間ごとに異なる表情を見せる彼女の音楽はどこか魔法のようである。そして今月17日発売のフルアルバム『good morning』収録の「「かわいい」」も披露。珠玉のアンサンブルがオーディエンスの心を高鳴らせた。


Text by 蜂須賀ちなみ
Photo by Yosuke Kamiyama(SOUND SHOOTER)

手にしているレキシのオリジナルグッズ『INAHO(イナホ)』を楽しそうに揺らしながら、どんどんBARK STAGEに集まってきたたくさんの観客。牧歌的な田園のような気もしてくるこの不思議な空間に、突然法螺貝の音が響き渡った。現れた池田貴史(Vo・Key)を出迎えた歓声が、ものすごい。本日のレキシバンドのメンバーは、健介さん格さん(G/奥田健介 from NONA REEVES)、元気出せ!遣唐使(Piano・Cho/渡和久 from 風味堂)、パーマネント奉行(B/真船勝博 from FLOWER FLOWER)、江戸っ子メグちゃん(Dr/佐治宣英 from FLOWER FLOWER)。
「何だ、そのイナホの数は? ありがとね。『ビクターロック祭り』、2年連続でありがとう。ケビン・コスナーです! イエーじゃない(笑)。じゃあ、早速イナホを振ってこうか。何が聴きたいんだ? サザンの曲聴きますか? イエーじゃない(笑)」、ウィットに富みまくった挨拶を経て、1曲目「狩りから稲作へ」。手拍子をしながら《♪縄文土器 弥生土器 どっちが好き?》と大合唱する人々のテンションが高い。際どいパロディネタ、誰もが知っている名曲の大胆な引用も連発され、皆の笑顔の輝度がどんどん高まっていく。お約束のコール「キャッツ!」もバッチリ決まった。「まだ1曲目でこんなに汗だくになるし。ビクターと言えばキャッツじゃなくてドッグだし(笑)。一応“ドッグ”も言っておくか」、観客に「ドッグ!」と叫ばせたりもしつつ、大いに盛り上げたオープニングであった。

「みんなで年貢を納めにいこうか!」と呼びかけて突入した「年貢for you」。耳を傾けていると、自ずと身も心も和む。たくさんの腕が左右に揺らぎ、《♪年貢 年貢》という大合唱が起こるフロアの風景が、とても清々しかった。そんなピースフルな場面の後に迎えたインターバル。「せっかくなので十二単衣に……」、着替えをしつつ、MCで喋り過ぎると出演時間が足りなくなる状況をぼやいた池田。「レキシからMCをとったら何が残る? カツオからいたずらをとるのと同じだぞ!」などと言いながら無事に着替えを済ませ、紫式部に変身してから届けられたのは、もちろんあの曲「SHIKIBU」。そして、「暑いから」と十二単衣を脱ぎ、ラストに披露された「きらきら武士」。パワフルに躍動するビート、ソウルフルな歌声が、人々のダンス衝動を果てしなく加速していく。圧倒的な一体感を生み出しながらエンディングへと辿り着いた瞬間、さわやか極まりない余韻が会場全体に広がっていた。


Text by 田中大
Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

「幕張ー!この会場全員でロックの魔法にかかってみないかー!」と牧達弥(Vocal/Guitar)が叫び、「マジック」でスタートしたgo!go!vanillasのステージ。虹色の照明に負けないほどゴキゲンなサウンドが瞬く間に転がり始める。さらに「ニューゲーム」「スーパーワーカー」など、今月10日に発売したばかりのアルバム『Kameleon Lights』収録曲も披露し、バンドの「今」を堂々と提示する。最新曲を早くも全力で楽しむオーディエンスの姿は頼もしいし、同時に、自由度の高い彼らの音楽の即効性を思い知らされたのだった。フロアにいる全員をしゃがませて一斉にジャンプ!なんて演出も発火剤となり、ひたすら温度を上昇させ続けたROAR STAGEに、晴れやかな表情を浮かべるメンバーの姿。「ビクターとロックの未来は俺たちに任せろ!」という長谷川プリティ敬祐(Bass)の言葉を聞きながら、この遊び場がさらに育ったあとの未来が楽しみになったのは言うまでもない。


Text by 蜂須賀ちなみ
Photo by Yosuke Kamiyama(SOUND SHOOTER)

go!go!vanillasの熱気をそのまま受け継いでROAR STAGEにでっかい祝祭空間を描き出したのが、「ビクターロック祭り」初登場・DJやついいちろう(エレキコミック)。超満員状態の会場を見回し「ハッピーバレンタイン!」と呼びかけ、いきなり星野源「Sun」でフロア丸ごとハンドウェーブの渦へと巻き込むと、B'z「ultra soul」ででっかいハイジャンプの輪を生み出してみせる。さらにRADWIMPS「君と羊と青」でシンガロングを呼び起こし、ELLEGARDEN「Red Hot」でフロアを揺さぶり……といった具合にロック/ポップ名曲群を次々と繰り出し、あたかも歓喜の伝導師のように熱気をぐいぐいと高めていく。

レミオロメン「粉雪」では“コントやろう!”というやついの提案から、「観客を野次るやついにブーイングの嵐→一転してサビで♪粉雪?の大合唱」「観客が次々にフロアを去る→サビで戻ってきて♪粉雪?の大合唱」という演出も敢行。そんな寸劇チックな展開までもが熱狂の燃料になるくらいに、やついのDJワークはルール無用の高揚感にあふれている。レキシとのコラボユニット「エレキシ」の楽曲「トロピカル源氏」を披露した後、ラストは“ビクターさんの永遠の発展を願って……”とTRF「survival dAnce」で大団円! “僕たちも、ビクターも、サバイバルしていくぞ!”というやついのコールに応えて一面にシンガロングが広がり、サビ前に全員しゃがんでからの一丸ジャンプにROAR STAGEが揺れる! 痛快なまでの快楽に満ちたひとときだった。


Text by 高橋智樹
Photo by Yosuke Kamiyama(SOUND SHOOTER)

ドラム:クリフ・アーモンド、ギター:松本大樹、キーボード:野崎泰弘、 バックボーカル:加藤哉子&アチコ(2曲目から)、という『NOW AND THEN Vol.2』ツアーと同じ布陣。岸田繁がアコギを弾き始め、「グッドモーニング」でゆったりとスタート、そこから「Morning Paper」「Race」「ロックンロール」「Hometown」と、04年のアルバム『アンテナ』を頭から5曲目までやる展開。5月に『NOW AND THEN Vol.2』ツアーの『アンテナ』編が控えているのでその布石なのだろうが、“うわ、これ絶対いいツアーになる”と早くも思わせる仕上がり、どの曲も。

岸田、「ロック祭りということで、普段はフォークソングをやってるバンドなんですが、今日はロックを用意してきました(笑)」と言いつつ、「すけべな女の子」でまたも強靭なグルーヴを響かせる。続いてバンジョーを持ち、「みんなテレビ観る? 今、NHKの『みんなのうた』で流れている曲をやります」と、番組に書き下ろした「かんがえがあるカンガルー」を初披露。で、「あと1曲だけやって、酒飲んで帰ります」「まだレコーディングもしてへん曲やけど、やります。シングルとかでも出ません。幕張の思い出にしてください」と、「どれくらいの」という新曲をプレイ──という、レアなシメかた。「どれくらいの」、でっかいスケール感のリズムとメロディに、「サンフジンズで得た?」と思わせる韻の踏み方の(ただしシリアスな)言葉がのっかる、すばらしい曲だった。音源化希望。


Text by 兵庫慎司
Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

サウンドチェックで何曲も披露するという大サービスぶりを発揮していたSAKANAMON。一旦ステージから引き揚げ、正式なスタート時間に再登場した藤森元生(Vo・G)、森野光晴(B)、木村浩大(Dr)を出迎えた歓声は特大級だった。そして、「いらっしゃいませ。SAKANAMONです!」、挨拶の言葉を合図にスタートした1曲目「マジックアワー」。瑞々しい同期サウンドとバンド演奏の融合具合が心地よい。観客は早くもすっかり引き込まれ、夢中になって踊っている。続いて、「まだまだ踊れますか?」と森野が皆に呼びかけて「アリカナシカ」。エレクトリカルな音像に彩られながら哀愁のメロが高らかに響き渡る。極上ビート、美メロ、骨太なバンドサウンド、何処か郷愁を誘う朴訥とした風味の歌声……SAKANAMONの音楽ならではの魅力が、オープニング直後から冴え渡っていた。

ついに『ビクターロック祭り』に出演できた喜びを、森野が語った場面を経て、いよいよ後半戦へ。「音楽が皆さんにとっての盾になればいいなと思って作りました」、こめた想いを藤森が説明してから披露された「PLAYER PRAYER」。軽快に駆け抜けるサウンドが、観客を一層夢中で踊らせる。そして、本編ラストを飾ったのは「TSUMANNE」。曲の途中で「今日はバレンタインデイですね。僕はいい思い出なんてありません。日頃のうっぷんを叫んでください!」と藤森が呼びかけ、始まったコール&レスポンスが実に痛快だった。《♪つまんねぇよつまんねぇよ~》というフレーズを何度も交わす内に会場内に広がった熱気。人々の抱え込んだモヤモヤがどんどんポジティヴなエネルギーになっていくのを感じた。

アンコールを求める声に応えてステージに戻ってきたメンバーたち。「まだサカナクションが始まらないからアンコールやります! でも、時間が押すと怒られるから(笑)」、森野のMCが和やかな笑いを誘った。そして、4月20日にリリースされるニューアルバム『HOT ATE』の中の収録曲の1つ「アイデアル」を初披露。藤森がバンドのマスコットキャラクターである『サカなもん』の人形を放り投げて演奏が終了した時、ステージを包んだ大きな拍手。彼らの全力投球の演奏を堪能し、観客は誰も彼もが大満足の様子であった。


Text by 田中大
Photo by Yosuke Kamiyama(SOUND SHOOTER)

 「ビクターロック祭り2016」もいよいよフィナーレの時が近づいてきた。ここBARK STAGEのトリを飾るのは、2014年の第1回開催に続きヘッドライナーを務めるサカナクション! ステージ前面のPCの前でスタンバイした山口一郎(Vo・G)/岩寺基晴(G)/草刈愛美(B)/岡崎英美(Key)/江島啓一(Dr)が繰り出す1曲目は「ミュージック」。静かな深い水の底をたゆたうような、それでいて途方もないスケールの高揚感に包まれているようなクラブスタイルの音像が、幕張メッセの広大な空間を包み、満場のオーディエンスのシンガロングを呼び起こしてみせる。曲中の暗転とともにバンドセットに切り替わると、その音世界はよりいっそう肉体的な躍動感を帯びて、BARK STAGEの空気を刻一刻と熱く震わせていく。

前回出演から2年の間に、草刈の出産に伴うライブ活動休止→再開、新レーベル「NF Records」という大きな変化を経験したサカナクション。「帰ってきました! サカナクションです!」という言葉に続けて「アルクアラウンド」でオーディエンス丸ごとクラップと大合唱の嵐へと巻き込んでみせた山口の歌声は、2年前の出演時よりもさらに決然とした存在感に満ちている。立て続けに披露した「モノクロトウキョー」の曲中に「ビクター!」のコールを盛り込み、「まだまだ踊れる?」と日本舞踊の踊り子を呼び込んで「夜の踊り子」を高らかに響かせ、レーザー光線舞い踊るメッセの頭上を高々と指し示す山口。その姿はまさに、ロックとポップの未知の可能性を力強く開拓していく冒険者を思わせるものだった。

中盤には「まだまだ、まだまだ踊れますか? これから始まるダンスタイム! 全員で、この幕張の会場を、踊って揺らそうじゃないか!」という山口のコールから「SAKANA TRIBE TRANCE MIX」へ。和太鼓のバチを手にした岩寺&草刈の太鼓乱れ打ちが轟く中、山口がエレクトリック・ポイを回転させると「ビクターロック祭り」の文字が! そこからノンストップミックス状態で「アイデンティティ」へ突入、観客一面の歌声とハンドウェーブに思わず山口からも「すげえ!」と感嘆の声が漏れる。アウトロとクロスフェードする形で「ルーキー」へ流れ込んだ後、「ビクターとは、年内にアルバムを出す契約なので(笑)。新しいアルバムを作ろうと思っています!」と明かして歓声を巻き起こした山口。本編最後の「新宝島」のエモーショナルなアンサンブルとともに「なんだかんだ言って、僕たちビクターが大好きです!」と叫び上げた彼の言葉に、ひときわ熱い歓喜の声が湧き起こっていた。

鳴り止まない手拍子に応えて再登場した5人。「まだ踊り足りない? じゃあ、1曲だけ!」とアンコールで鳴らしたラストナンバーは「Aoi」だった。ハイブリッドな構築美を強烈にドライブさせる5人のバイタリティが、BARK STAGEを目映く彩って――終了。現在は「SAKANAQUARIUM 2015-2016 "NF Records launch tour"」の真っ最中、4月9日・10日には再びここ幕張メッセに立つサカナクションの「その先」への期待感に胸躍る、最高のステージだった。


Text by 高橋智樹
Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

本日のシメは「ワン! チャン!!」のコーナーの前説も務めたDJダイノジ。大谷&大地とダンサー森森子&ななななみの4人を基本フォーメーションに、時々ダンサーが増えたり、大地くんのエアギター&エアベースが炸裂したり、大谷くんが「今日はあなたたちの好きなもの、全部肯定しにきました!」と何度も叫んだりしつつ、はてしなく広がるダンスの海状態を作り出していくさま、圧巻でした。以下、本日ダイノジにスピンされた曲。

YOUR SONG IS GOOD「ウィッス!ウィッス!ウィッス!」OFFSPRING「What happened to you」ヒステリックパニック「うそつき。」KEYTALK「MONSTER DANCE」KANA-BOON「ワールド」ポルノグラフィティ「ミュージック・アワー」星野 源「Week End」MARK RONSON「Uptown Funk feat.Bruno Mars」AKINO「創聖のアクエリオン」SMAP「オリジナルスマイル」go!go!vanillas「エマ」UNISON SQUARE GARDEN「シュガーソングとビターステップ」


Text by 兵庫慎司
Photo by Yosuke Kamiyama(SOUND SHOOTER)

kiki

オーディション「ワン!チャン!!~ビクターロック祭りへの挑戦~」を経て見事本日の出演権を勝ち取った2組が登場したワン!チャン!!ステージ。

1組目は準グランプリを獲得したkikiだ。ブラックミュージックを基盤としたサウンドは「お洒落」の一言では片づけられない伸びやかさや力強さも兼ね備えている。身体を揺らしながら演奏するメンバーの姿からも本人たちがこのステージを大いに楽しんでいることがよく分かる。「♪今日は本当にありがとう/最後の最後まで楽しんで」と歌った「Nancy」での粋な計らいもこのステージに華を添えた。

ヤバイTシャツ屋さん

続いてはグランプリを受賞したヤバイTシャツ屋さん! フリップを用いながら曲中に出てくる地元(喜志)や大阪について説明したあと、演奏を始めた。男女ツインヴォーカルとともに爆走するパンクサウンド、地元あるある的な歌詞、飾り気のないMC。あっという間にみんなを味方にしてしまう力がものすごい。新曲を作ってきたと前振りをしながら「いや、そんな曲ないやん!」とツッコミしたあと突入した「あつまれ!パーティーピーポー」の頃にはオーディエンスも拳を上げたり腕を左右に振ったりしながら彼らのステージを楽しんでいた。


Text by 蜂須賀ちなみ
Photo by Yosuke Kamiyama(SOUND SHOOTER)