Cocco
【LIVE REPORT】
『ビクターロック祭り』4組目の登場はCocco! 舞台やイベントへの出演はあったものの、彼女がライブを行うのは2011年の『Coccoザ・ベスト盤ライブ5本〆』以来実に約2年4ヵ月ぶりということもあって、満場の観客がひときわ強い期待感と緊迫感をもって彼女の登場を待ち受ける中、薄暗いステージに根岸孝旨(B)、椎野恭一(Dr)、堀江博久(Key)、藤田顕(G)が静かにスタンバイ、そしてーー目にも鮮やかな青いドレスをまとったCoccoがゆっくりと歩み入って軽やかに手を振ると、この瞬間を待ち詫びたオーディエンスから熱い拍手と歓声が湧き上がる。
「沖縄の海に、辺野古のジュゴンに捧げます」とひとこと静かに語った後、彼女が歌い始めたのは、約3年半ぶりのオリジナルCD作品となる、3月12日リリースのミニアルバム『パ・ド・ブレ』のリード曲でもある新曲“ありとあらゆる力の限り”。真摯な祈りに満ちた歌声が、しなやかに、たおやかにホールいっぱいに広がっていく。フェスの熱気も祝祭感もその雄大な歌のパースの一部にしてしまうような広がりが、その歌には確かにあった。そのまま“強く儚い者たち”で悠久の時間と空間を描き出した後、『パ・ド・ブレ』にも収められている“夢見鳥”へ。『Coccoザ・ベスト盤ライブ5本〆』でも歌われていた新曲だが、今日の彼女の歌はその時よりも遥かに冴え渡っていて、限界のその先めがけて伸び上がるようにトップノートを歌い上げるCoccoの伸びやかで力強い熱唱が、オーディエンスの心と身体を震わせていく。
さらに続けての楽曲は、Coccoが初主演を務めた舞台『ジルゼの事情』で披露されていた新曲“ドロリーナ・ジルゼ”。間奏では「バレリーナ・Cocco」としてバレエのステップでステージを舞い踊り、軽やかにスピンを決めかと思うと、次の瞬間には「歌い手・Cocco」に戻って激しく身体を揺らしながら、紅蓮のサウンドスケープと高め合うような濃密なヴァイブに満ちた歌を聴かせていく。曲が終わり、再びバレエ・スタイルでうやうやしく一礼する彼女に、高らかな拍手が巻き起こった。ラスト・ナンバー“樹海の糸”の澄み切ったメロディをひときわ美しく歌い上げた後、満場のフロアに向かって手を振り、根岸とハグし合う彼女の満足げな表情にも、この日のアクトの充実感が滲んでいた。最後はCoccoを中心に5人で手を取り合って一礼! 惜しみない拍手と歓声が、いつまでもステージに降り注いでいた。
ライター:高橋智樹/カメラマン:橋本 塁(SOUND SHOOTER)